七日日記

七日日記です。更新頻度はそんなに高くないと言われています。

喫茶店と借金取り

 私はコーヒーが好きで、よく近所の喫茶店に足を運びます。けれども別にコーヒーに明るいわけでは決してなく、いつも店員さんがおすすめしてくれるモノを飲んでいます。美味い不味いの区別ぐらいはできますが、それ以上となると無理ですね。

 

 喫茶店で私は、いつも端っこの席に座ります。行く度行く度店員さんに「どうぞ〜〜」と手で示されるからです。私はその端っこの席にそれはもう座りたくて座りたくて震える、ほどではないのですが何故か店員さんは「どうぞ〜〜」と案内してくれます。あれほどにこやかに「どうぞ〜〜」なんて言われたら、断って別の席に移ることのできる人なんているのでしょうか(いや、いない)。

 

まぁ? 常連扱いされて私も悪い気はしませんし? というかむしろ私専用みたいにいつも空けてもらってるのが嬉しいといいますか?

 

 

 

 

 

 

 

 というのも、そこが唯一の一人席なのでいつも空いてるからなんですけどね。店側も空いたスペースに客を押し込みたいんでしょうね、よっぽど。

 

さて。

 

 

 先日、私はいつものように端っこの席に座ってコーヒーを嗜んでおりました。端っこの席の隣には端っこの席たる所以の店壁と、上方に小さな換気用の窓があります。端っこの席だから壁があって当然ではありますが、端っこの席がどのような端っこの席であるのか疑問に思われる端っこの席諸賢もおられるかと思いますので。端っこの席。

 

 晴れた日の午後だったと記憶しております、その時、小窓の方から声が聞こえてきました。

 

「おい! いるのはわかってんだよ!」

 

 一度コーヒーを口に含み、嚥下します。そうして落ち着いたところで、私は思いました。

 

 

 

これ、もしかして借金取りでは?

 

 

 再度、にわかに興奮を始めた私の心持ちを抑えるべくもう一度カップを口に運びます。しかしながら精神の安定がなされる前に、第二声が飛び込んできました。

 

「おい! でてこねェならピンポン鳴らすぞ!」

 

 間違いない。私は確信しました。これはかの有名な借金取りです。義理とか人情とか大切にしそうな方々のアレです。今まで文字の上でしか見たことのなかった借金取りが、薄壁一枚隔てて存在している事実に、私の心は踊りました。ピンポン鳴らすぞ、というやけに可愛い脅し文句にも、なんだか逆にリアリティを感じます。ピンポン。かわいい。

 

 それ以降借金取りの怒鳴り声を聞くことは叶いませんでしたが、どんどんと響く無機質な音はしばらく聞こえ続けていました(言い忘れてましたが、喫茶店は一階にあり、隣にはマンションがあるのです)。

 

 当事者にとってはたまらないでしょうけれど、赤の他人である私からしたら良い菓子うけとなりました。ごちそうさまでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 で、この話をブログに書こうとしたところ思い出したことなのですが、くだんの隣のマンション、一階がお店になってるタイプのマンションでして、一階には人が住んでいないんですよね。あの借金取りは一体なんだったんでしょうか。